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何故か建設的な話をしているようには絶対に見えない風景。無駄がここで生産されます。 |
原口の得意と言えば“情報操作”だ。元々インテリや常識人にとって有効な方法だがツアーの我がままでお馬鹿な脳に効果があるかわからなかったがチャレンジすることにした。
まずはオーソドックスに『内緒の話しなんだけど、ハミルトンはここでの空気圧は0.3で走ったらしい……。」と流してみた。するとベアでは「空気圧は0.3で走って、イベリコ豚でも食べに行こう」になっていたライズでは「空気にマスタードとソースを10:3でまぜるのがイベリコ豚の美味しい食べ方らしい。」と変わっており。杉山カートでは「どうせツアーの連中だろ?イベリコ豚って言うけど、高け〜からスーパーの安い肉を買って来てもわかりゃしね〜よ。」になっていた。ジュンペイの所では「すっげ〜お昼豚シャブっすか〜!
ゴ〜ジャス〜!」と異常に盛り上がっていた。そしてフレンズに話が回ってくると「原口さん、豚肉足りないんだって。ちょっとこっち忙しいから10kg買って来てくれないかな〜。」と人の良いチームにはしわ寄せがしっかりやってきた。原口は予選どころではなくなり、今回下位に沈んでしまった。
タイトラで4番手と好位置につけた高橋は戦略的にレースを珍しく頭を使った。今日はタイトラの結果が示すとおり速い。とにかく速い。無茶苦茶速いのである。自分でも不思議なくらい速いのである。そして前にいるのはボーナスをかかえて、本日は終わっている二人と、かけ出しの久保が一発タイムを出しただけ、レースペースでは負けるはずはない。そこで今回の作戦は『ビックリ、何時の間にか前にいるぞ作戦』だ。一周目にピットインを済まし、今日の速さで走ると二周目以降にピットに入った人間は必ず高橋の後ろにでる。そこで「あっ!高橋さんが前にいる!
何時の間に!!」と、驚くという作戦だ。
「今日は勝ったな(俺ってカッコいいな〜)。」不適に笑う高橋は、作戦通りピットをすませてレースに戻ると、毎周回ピットから出てくるカートが全部高橋の前にでてくるのだ。「え〜何時の間に抜かれたの〜??」
高橋は自分のスタイルを忘れていたのである。そう毎周ラップタイムをおとして最期にはびっくりするくらいゆっくり走ってしまうスタイル。そう、高橋がゴールしたのは3日後の朝だった。
杉山カートの頭脳といわれるのが渋谷だ。渋谷は最近の流行を見て頭が良いよりもお馬鹿がもてはやされるのに気付いていた。「そうか〜、だからパンサーツアーの350に集まる人ってああいう人ばかりなんだ〜。」
サンプルを集めたり分析するまでもなく、実感として馬鹿のほうに力があると確信した。「フフフ私のゼッケン番号はジュウサ〜ン!! ジュウサ〜ン!!
だ。ほらっ、3の倍数だから馬鹿になれる。この法則が流行っている間は私と3と3の倍数が付く人は無敵だ〜!!」
勝利を確信してスタートを切った渋谷だったが、ツアーの中で九九の3の段ができるのが居ると思うのが間違いだ。渋谷の話を聞いていた全員が「やったー今日は俺の勝ちだ。」と思っていたのだった。
午後4時、表彰を前にみんなが和田を羨んでいた。「いいな〜和田さんは、速い車にのってて。」「……べつに〜、そんなことないよ〜。」「ホント、和田さんの車は34秒台が出る車ですから、私のより1秒以上速いんですよ。羨ましいな〜。」「………べつに〜、そんなことないよ〜。」「こんど僕の車のセッティング見て下さいよ。セッティングうまいんでしょうね〜。」「………べつに〜、そんなことないよ〜。」「だって最期の模擬レースで最下位からのオーバーテイク見事でしたよ〜。」「………べつに〜、そんなことないよ〜。」
謙遜する姿をみて、みんなは和田の人間性の素晴しさに感心した。しかし唯1点だけ、それからの和田は何故か異常に自分のカートを人に貸すのを嫌がるようになったといいうことだ。あの和田さんが……何故だろう??
昨年のチャンピオンチームの一員阿部が今年まったく活躍していない。今年度からシャーシを乗り換え、冨田という心強い相棒を迎え、ベアのてあついサーキットサービスを受けているのに。今年ゼロポイントと全く精彩がないのである。しかしこれは毎年のことなので、わざわざ新聞に書くようなことではないかもしれない。だっていつものツアーの風景なのだから。 |