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パンサーツアーでは普通メカニックが全部やってくれます。勝も負けるもメカのせいですから、頑張ってください。 |
「ちょっと待った〜!! みんな俺の事を忘れちゃ困るゼ!!」と、走り寄る人影があった。「あっ! あれは糸屑の眼力を持つという苅米さんじゃない。みんな〜しゃがんで〜!」
今350で“一番速い男”の称号持つ苅米だった。事件も最終章に入ったこの時に、敢て出て来た。そう、カート界では社会的地位や人間性よりも速い人間の方が偉そうに見える。今の苅米の発言は350に無視できない重い発言力を持ち、事件を解決に大いなる影響を及ぼすだろう。ツアーの参加者は安堵感から善子の言う通りに苅米をしゃがんで待つ事にした。
すると……「お〜い? みんな何処にいったんだ〜?」と、どういうワケか苅米はみんなが座っている横を通り過ぎ、走り去ってしまった。「危ない所だったわ。からまれたら厄介だから。」
苅米の行動にホットする善子だった。
そう、苅米の目は糸屑のように細長いため、左右の視認性は研ナオコよりも遥かに広いといわれているが、縦方向は50cmくらいしか見えないのだ。その為にみんなが急にしゃがんでしまったため、苅米には急に消えてしまったように見えたのだった。「善子ちゃん、苅米さんの話を聞かなくってもいいの?」「何を言ってるのよ〜。ライズのドライバーってみんな酒飲みのパラノイアばっかりなんだから。例え犯人として捕まえたって、責任能力無しってことで釈放されちゃうでしょ?
そうすると私のお手柄にならないじゃない。」「え〜、じゃあ残りは俺だけってこと?」「そう、山本さんが本命。だってチームメイトが犯人だったって誰も気付かない凄い結末だと思わない?」「普通、被害者の周囲から捜索が始まると思うけど……。」「え〜ホントに〜!!
でもさ、実は影に女がいて、なんていう展開になったら、誰もが驚くよね。」「うん、余りにもありふれていて驚くと思う。」「でもさでもさ、そこにお金の貸し借りとかあって更に複雑になっていったら、もうドキドキだよね。二人のドロドロの関係っていう感じ。」「ほんとにドキドキだよ、そこまで簡単な展開だと直ぐに捕まっちゃうからね。」「そんなに私の展開つまんない?」「だって本当は、イクちゃん、道を歩いてて蟻につまずいて死んじゃったんだよ〜。」「そんなつまんない死に方したの?」「アリエネ〜って感じ。で、そこを偶然通りかかった象に踏まれてペッチャンコになったの。」「まさか、象なんて通んないでしょ?」「だからゾ〜ッとしたもん。」「……。」
こうして、事件は善子が山本の話の展開に疲れて迷宮入りとなってしまった。レースの方は唯一善子にかまって貰えなかった苅米がやるせない心をレースにぶつけたため見事優勝した。
そして表彰式。
プレゼンターはイクちゃんだった。
「え〜? イクちゃん生きてたの?」「なにを馬鹿なことを。俺様は何時も元気だ。」「だって殺人事件は迷宮入りしたんだよ〜。」「迷宮入りしようがなんだろうが、私は世界から求められている男なのだ。必要な時には何処にでもあらわれる!!」
ウッザイ男だな〜と心の中で囁いた瞬間、殺人事件の解決の糸口が善子に見えた。「イクちゃん、ありがとう。いまの言葉がヒントになってイクちゃんが殺された訳がハッキリとわかったわ。」「だから殺されてないって。」「だってイクちゃんってすっご〜くウザイから、犯人はこうしてキンチョールジェットで『消えて無くなれ〜!』って、プシューってやったんだと思うの。」と言いながら発射されたキンチョールジェットは見事に命中、幾橋は肢体をピクピクさせながら退治されてしまった。「ね。だから犯人はわかったでしょ?
でも私は捕まらないから心配しないでね。だってかわいいから世間がゆるしてくれるの〜!!」
後日、この事件での逮捕者の数は『0』、ツアーも変わった所も無く続いている。 |