「なにいってるのよ! あんた達二人とも、どうでも良いような小さな事にこだわるライバル同士じゃない。ネジを閉めたの閉めないのとか、ウンコしたとかしないとか。バッカじゃないの〜同じちっちゃな男なんだから。」「え〜じゃあ“ちっちゃい男殺人事件”ってなるの? ダッセー!! カンベンしてよ〜!」「うわぁ〜そうか! 私も嫌だわ。ホントに犯人になる資格もない男ってもう、どうしようもないよね。こっちがカンベンして欲しいわよ。」と、善子に逆切れされてしまい、石井は今回犯人になることはあきらめた様だった。「じゃあ男前だし、秋山さんでいいや。なんかさ、愛する二人が劇的な家系の因縁で殺人犯と刑事として再会してしまうってな感じの悲劇っていうの? そんなふうになんないかな〜?」「ええっ? 俺のほうで話しを考えるんですか?マルさん書けないんですか?」「マルさんに任せたら、私ぜったいにお馬鹿系になっちゃうからさ、フェミニストの秋山さんにちょっと美人として扱ってもらうと私も嬉しいんだけど……。」「いや〜、俺は嘘は苦手なんですけど、やってみましょうか?」
と、うっかり秋山が本音を言ってしまった「嘘つかなきゃダメなのか……。」「いやっ、美人系の女性と可愛い系の女性がいて、善子ちゃんは……」とあわててホローした秋山だった。そんな秋山に「大丈夫だよ秋山さん私も大人だから、気にしないからさ、犯人は山下さんで我慢するわ。」
と、今回臨時の事務局長らしい態度でを見せたので、周りも“善子は大人になったな〜”と感心した。その時……
ピッ、ピッ、ピッ、と電話をかける音……「わたしヨシコっていうんだけどさ。あんた秋山さんの奥さん? 私何時までも影の女でいるきは無いし、美貌ではあんたに勝ち目はないんだから、財産半分あげるってのを条件にハンコ押してくれないかな〜。じゃあね。」 と、家族への配慮も怠らない善子の気遣いに周囲は“やっぱり善子だ”と感心し、秋山も涙を流して喜んでいた。
当然山下はこの状況で次に来る自分の運命はわかっていた。「あの〜善子ちゃん。僕には家庭もありますし……。」「あっ大丈夫だよ、ちゃんと犯人にしたてて、恥じをかかせないように死刑まで持って行ってあげるから、任せといてよ!」
やっぱり今日は厄日だと感じる山下だった。しかしその時、颯爽と現れた男がいた「身体はもやし、頭は大人。僕は名探偵モヤシ!善子ちゃん、アナタの推理は間違っている。」
もやし君だった。善子は推理をしていないのだから間違っているとか言われても、困るのだが、目立ちたいのが好きな二人がこうして向き合った今、言えるのは面倒臭い状況になったと言う事は確かだった。「モヤシ君。やっぱり出て来たのね。しかし私はアナタが思っている程単純な女ではなくってよ。本当の犯人を導き出すために山下さんをオトリに使っただけだったのよ。」
小学生相手に推理合戦だと歩が悪いと感じた善子の精一杯のミエにモヤシ君は「そうだったんですか、さすが善子ちゃん。やはりアナタは僕の見込んだ人だ。」
そろそろコナンごっこにも飽きて来たモヤシ君は他の遊びに行く為、話を合わせて来た。「そうすると善子ちゃん、カート界の伏魔殿“ベアレーシング”に立ち向かうつもりなんですか?」「そうよ、私が犠牲にならなければ世界に平和はないと思うの。黙って行かせて……。」「善子ちゃん。アナタっていう人は……」
二人の利害はここで一致したようだった。知らない間に無実になっていた山下は『善子ちゃんもベアレーシングじゃん』と、心の中でツッコミをいれていた。
ツクバサーキットの北の端、一年中霧の晴れない迷いの森、その中にベアレーシングの軽薄なテントは立っている。善子はついに対決の決心をし、足をすすめるのだった。「あっ、そうだその前に久美さんに、色々相談にのってもらお〜っと。」 |