パンサーツアーは夫婦でカートを始めると、旦那が最初に伸びるのだが、あっという間に奥さんに抜かれてしまうという定説がある。その話に挑戦したのが不二門だ。彼女が先に始めているので後から夫が始めてもこの定説とは違うことになると告げると「いいえ始めるのは夫ではないんです。この私の愛犬ちゃんなんです。」
そこには、レーシングスーツに身をつつんだトイプードルが居た。
「このワンちゃんカートに乗れるんですか?」
「バカにしないで下さい。とっても運動神経はいいんです。」
そういってカートに乗って走り出したワンちゃんは、なんとツアーレコードを出してしまった。
驚いたのはツアー事務局とカートショップの面々だった。そう、飼い犬や飼い猫に負けて飼い主が来なくなったらパンサーツアーとカートショップの存続が不可能になってしまう。そこで、パンサーツアー事務局ではワンちゃんがライセンスを持っていない事を理由に参加を拒否、残念ながら犬の初優勝と、ツアーのペースが驚くほど遅いことがバレることが無くなった。
パンサーツアーでは自分だけが有利になるルールを採用する傾向がある。今回は加藤の提案したルールが見事採用された。
加藤が言うには「俺は70歳になったんだから、いちいちピットに止まらなくっても良いだろ?」 と、論理的な説明も、レースの公正性も全く説明もされないまま提案がなされたのだ。それに対し、パンサーツアー事務局は70歳以上が加藤一人であることを確認、このルールは全く人のことを考えていない自分勝手な言い分だと断定、採用を決定した。事務局長の幾橋はそれにたいしてコメントを出した「公平に、どんどん公平にしようとしてルールを改正してゆくと、ただつまらないレースになってしまう。自分だけが有利だと、そのレースが楽しくなるのは当たり前で、そんなレースは間違い無く楽しいレースになる。」 と、独自の哲学を披露、他の参加者からクレームが出た場合の解決策も教えてくれた。
「悔しかったら70歳になればいいじゃん、そうすれば止まらなくってもいいんだから。」
加藤と幾橋はこれを論理的な解決だと真面目に思っている。
ドトール中村が初参戦してきた。前述の"中村の法則"によると、努力しても無駄なひとりだ。しかしドトールはラッキーだといわれている、そうベアには秘密兵器があるからだ、「中村さん、この壷を買うとタイムが1秒上がる壷なんだ。中村さんだから譲ろうとおもうんだけど、活かしてくれないかな〜。」「えっ、そうですか、その壷おいくらなんですか。」「10万円でいいよ。」「じゅ、十万……」「この壷で失敗した人はいないんだ。間違い無いよ」
そう、このベアの壷を買った人間はいないので、誰も失敗していないのだ。
「その筋では有名なショップであつかっていた品だから、中村さんに持ってもらいたいんだよ。」
そう、ダイソーから仕入れた100均中の100均の壷なのだ。
ベアにそこまで言われて本当に幸せな中村だった。
高梨が初参戦してきた。カート業を営んでいて本当にカートが好きな為、楽しんで参加できるレースということでパンサーツアーに参戦してくれた。
ただ、高梨が驚いたルールがあった。それはツアーではレース中にテクニックでオーバーテイクするよりも、嘘をついて騙してオーバーテイクするほうがオシャレだとランクされることだ。「赤が消えたらスタートなのに、赤が消えて青がついたらスタートだと言ったほうがいいんですか?でも、そんなんでひっかかる人が居るんですか?」
パンサーツアーでは間違い無く3人は引っ掛かる。
「それに、雨の時『ドライに固定だよ』って言って信じる人が居るって信じられませんけど。」
ツアーには、ダマされてるよと教えなければドライのままでていた人間がちゃんと居る。
高梨はこの情報が本当なのか嘘なのか、疑心暗鬼でちょっと熱がでたそうだ。
杉山カートの秘密兵器小宮山がまたツアーに戻って来た。「杉山さん、本当は小宮山さんってどんなドライバーなんですか?」「小宮山については極秘扱いだからしゃべる訳にはいかね〜んだよ。」「何を隠してるんですか?もしかして元○○ドライバーとか言うんじゃないでしょうね?」「いや、本当に勘弁してくれ……。」 と、あの杉山が顔を少し赤らめて困ったいた。「じゃあ、あの噂は本当なんですね。」「……。」
小宮山は、杉山カートにとってあまりにも恥ずかしい存在なので秘密にしていると言われている。
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