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優勝した山田さん。皆にみえるかな〜?? 一番存在感が無いといわれている人です |
ウイリアム王子の結婚式を観ていて「ダイアナの方が美人だったよね〜。」と言った言葉に「今時の女性のスタイルについていけてないだけじゃない?」と返され、時代や流行の存在を今さらなながらに感じていた時、「でもウイリアム王子は若い時の方が格好良かったわね〜」と、男性はハゲるとルックスで過去の人に追いやられてしまうことを聞かされ、何故かカートの事を思い出してしまった。しかし"あの人"には、過去にも現在にも栄光は無かったのに同列に扱って、ウイリアム王子には悪い事をしたな〜と感じた為、ここにパンサーツアー御殿場グランプリの真実を書き残す決心をした。
実は、パンサーツアーOG350で大変な事件が起こってしまったのだ。
TTが終わって直ぐにAPGの方からクレームがついたのだ。
「すみませ〜ん。地震後ようやく皆の気持ちが上向いて来た時に、大勢で当方のレースにエントリーしていただいたのは有り難いのですが、ポールポジションの山田さんはどうにかなりませんか? こんな時にあんなに華の無い人がポールだと凄く陰気な感じになってしまうんですけど。」
すると事務局長の幾橋は胸をはって
「心配しなくっても大丈夫です。終よければ統べて良しです。」
「あっ……、そうですか。ではレースの方、よろしくお願いいたします。」
パンサーツアーは大人のレースということもあって、APGの方では事務局がなんらかの手心を加えてくれるんだろうと安心をし、一旦はクレームを下げてくれた。
ように玲於奈が山田をオーバーテイクし、サーキット全体に安心感が広がったが、ピットインで玲於奈は後方に下がってしまった。
「田中さん、どうなってるんですか? 山田さんがまだ先頭を走ってますよ!」「大丈夫ですって、終よければ統べて良しですって。」ベアの田中はカート界の長老らしく落ち着いて応えた。
するとレース後半に風戸が山田をオーバーテイク、全員がほっとした。
そして19周目、それまでピットインしていなかった最後の一人、先頭の風戸がピットに入ると、APG全体が祈るような気持ちで風戸のピットアウトを見守っていた。
「うあああああああああああああ」
サーキット全体に悲鳴が上がった。無情にもボーナスポイントの多かった風戸は山田の前で戻る事ができずラスト周回、山田が先頭で第一コーナーを駆け抜けていったのだ。
「終わった…。カート界に春は来なかった……。」
どんよりとした空気が流れ、空は厚い雲でおおわれてしまっていた。
「田中さんなんとかならないんですか? 玲於奈は? 玲於奈は抜けないんですか? ああ……ダメだダメ。山田さんが勝っちゃった……。」
APGの関係者全員が頭を抱え、うずくまってしまった。
「大丈夫ですって、終よければ統べて良しですって。」それでもベアの田中は落ち着いてみんなに言い聞かせていた。
そして3分後。あまりにも華が無く地味だった山田は、誰の記憶からも消え去り、陰気で悲惨な印象さえも見事になくなり、リザルトを手に取った人も、「350は山田さんって人が勝ったんだ」と何気ない日常に風化させてしまっていた。山田は勝とうが負けようが一切問題はなく、誰の生活にも影響を与える事は決してない。そう、世界一印象が薄い男なのだ。
事務局の二人、幾橋と丸塚は好きなカートのブランドも違うし、ドライビングスタイルも全く違う、しかし何故か馬が合うらしい。
昨年末パンサーツアーの2011年度のスケジュールの会議中のこと……
「丸さん、初戦はやっぱり、新東京じゃなくちゃダメだよね。」
「そう。交通の便が良くて走った経験も豊富なサーキットだから、皆が参加しやすい。」
「そう、だから皆が参加する……」
「そして速い人間に間違い無くボーナスが付く、石井ちゃんとか久美さん、そして玲於奈。」
「すると第2戦に邪魔者がいなくなるから、俺の得意なAPGを持ってくる。」
「するとイクちゃんが優勝。」
「ヘッ、ヘッ、ヘッ……」
「ホントにお前は悪知恵が働く……」
「なになに丸さんこそ。3戦目は未だ速い人間のボーナスがとれていないから、丸さんの得意な袖ヶ浦を持ってくる。」
「袖ヶ浦は皆ほとんど経験が無いけれど、俺は騒音テストの段階から役得で参加して何度も走っている。無茶苦茶有利。」
「と言うよりも丸さんが優勝。」
「ヘッ、ヘッ、ヘッ……」
「ほんとに悪い事は良く思い付くよね〜。」
「イクちゃんほどじゃないよ……」
(二人とも)「ヘッ、ヘッ、ヘッ……」
努力して勝つことを考えない二人は、ルールだけではなく事務局の特権さえ最大限にいかして優勝を画策している。そして、作戦会議ではいつも成功しているらしい。
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