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真面目な顔をしていてもカートの話はしていない二人でした。 |
世田谷のとあるマンションの片隅に、なにやら怪し気な人が集まる店がある。モータースポーツ好きが集まるというその店は、人工的に造られた滝の横を階段で降りて行くとある。常連達はその店を、店名の「ブルー ベア」ではなく、店主の風貌から、愛情を込めて「熊ッパゲ」と呼んでいる。今日もなにやら怪し気な三人組がやって来た。パンサーツアーの茂原大会の帰りのようだ。
ちょっと話の中身を覗いてみよう。「うわぁ! 眩し! ……田中さん帽子を被っててよ。眩しくてお店にはいれないよ。」「も〜イクちゃん、相変わらずだね。350も今日はレースだったんじゃ無いの? どうだったの?」「今日は丸さんが、トップ争いをしてたんだけど、後2周ってとこでリタイヤしちゃったんで、その残念会なの。」「へえ〜丸ちゃん残念だったね〜どうしたの?」
「いや〜、山田さんと小川君と僕の3人でテールツーノーズでトップ争いをしてたら。2コーナー過ぎたところからさ、逃亡中のノリピーがいきなり飛び出してきたんだよ。」「エ〜ッ! ノリピーがいたんだ。」「そう、それでびっくりして3人ともスピンして止まちゃったんだけど。
小川君がいきなり『ノリピー僕と一緒に逃げましょう!』って言い出しちゃってさ〜」「小川ちゃんは、ノリピー世代だからな〜」「で、俺も『いや、俺が安全にかくまってあげるよ』と言ったら、山田さんも『僕と一緒に……』っていいだして、そしたらノリピーが……」「えっ? ノリピーが山田さんに反応したの?」「うん、そうクイ気味に『あんただけは嫌!』ってハッキリいったんで、山田さんはしょげて直ぐにレースに戻っていたんだ。」「それで、山田さんが優勝したんだ。」
「そうなんだ、で小川君がホントに一生懸命に『僕が貴方を幸せにします。だから僕と逃げてください。』って、ノリピーも小川君が真面目な人だと分かったらしく。」「え〜!! 小川ちゃんの申し出を受けたの?」「いや、逆に小川君を不幸せにしちゃいけないと思ったみたいで、『私はこの人と一緒に逃げます』って俺を選んだわけよ。」「え〜!! 丸さんが選ばれたんだ。」「ノリピーも意外にしっかりしててさ。俺の耳もとで『どうせ、あんたは百恵ちゃん世代でしょ、私はファンを守らなきゃいけないの。だから、ちょっとだけ協力してくれる?」って言われたんで、俺も「良く分かったな。そう、意外に岩崎宏美なんだ、協力するよ。」って。」「岩崎宏美〜?? 趣味悪る!」「うるせー! 歌は旨いんだよ!
……で小川君に『ノリピーは俺に任せてくれ、君はレースに戻ってくれ』っていったら、小川君は泣きながら『ノリピーをお願いします。僕はいつ迄もノリピーの事を思っています。』ってグズグズしていたので、小川君は表彰台をのがしちゃったんだ。」「えっ? じゃあ丸さんとノリピーはどうなったの?」「サイン貰って、一緒に写真撮って、最後に握手してもらった。」「ノリピーにとって、丸さんは逃避行に全く役にたたなかったんだ。」
「ヘヘヘ……。ところで、イクちゃん。お前ポールだったのに、スタート直後に居なくなったんだけど。、何処に居たの?」「えっ? そっ、そんなことはないよ。ちゃんとトップグループに付いて走ってたよ。」「え〜っ、秋山さんとこっそりレース中に抜け出したって、みんな言ってるよ。」「そんなこと無いって。秋山さんが『女を紹介してやる』って言ってくれたなんて事なんてなっくて、3コーナーから9コーナーに抜けるショートカットに女の子を待たせた事なんて、絶対無かったから、ホントにスタートに失敗しただけだよ。」「そこには若い子いたの?」「秋山さんは熟女好みだから、若い子は居なかったなんてことは知らないよ。」「でも、なんで直ぐにレースに復帰したの? あっ、趣味の子は居なかったんだ……」「だから、行ったら女が『えー秋山さんちょっと話が違うんじゃ無い?』って怒ったんで、戻るしかしかたなかった……事なんか無かったからね。」「なんだ、イクちゃん振られたんだ。」「年増は、こっちから願い下げだって言うの。こんな悪いことなんて、ホント生まれて1回もやったことないよ。」「……。本当にイクちゃんは、良いヤツだよ。」
「だろ? あっそうだ、田中さん玲於奈はどうだったの? TT遅かったみたいだけど。」「いや〜玲於奈は、TTで最終コーナーのイエローラインを踏んじゃって、そしたら線の中からエビちゃんが出て来て『イエローラインを踏んだのは右のタイヤか? それとも左のタイヤか?』って聞いて来たから。『右のリアタイヤです。』って答えたらさ……、『痛てーじゃねえかこのヤロー!!』って、いきなり怒りだして、ドロップキックをしてきたんだ。」 |