今回榛名で一番注目されていたのが高橋だ。昨年のFirst VR32Cはその戦闘力の高さから“名機”との誉れが高い。そのVR32Cのポテンシャルを活かし、さらに運動能力をアップした09年度の新作First FX8を高橋は投入してきたのだ。ベアの田中によるとFX8は「ここだけの話しだけど。本当に商売抜きで言うと、今までのカートの中で、ベスト・グレーテスト・アンビリーンバボー・ファステスト・ストロング・ピュア・エレガント………(5分経過)……マイフェイバレットマシンだから買わなきゃ損だよ。」
と語り、今購入すると玲於奈のサイン入り等々力・翠屋の『みどり絹こし豆腐』一丁がもれなく付いてくると、実に誠実に教えてくれた。ちなみに高橋は『玲於奈のサインはいらないから“あぶらあげ”を付けて欲しい』という無理難題をふっかけ、田中は国家プロジェクト級の努力によってこの商談を実現し、実戦投入第1号となったということだ。
高橋はタイムトライアルで、新車の秘密兵器フロントブレーキの力を遺憾なく発揮。頭の堅い大人がカッコ付けて使っても、そんなに簡単に流行に付いていけない事実を暴露した。高橋はフロントブレーキの有効性について「いや〜、無理して使ってみたんだけど、いきなりだと使いこなせないね。ドライビングのリズムを掴むのにとっても苦労したよ。」と、言い訳には抜群に効果があるので、自信をもって皆に勧めたいアイテムだと語った。
遠藤が最近へんな言葉を使うようになった。「1コーナーの取舵(トリカジ)はワンオフする?」「ト、トリカジ??」「何言ってるの。十二支で酉(トリ)は西でしょ。だから左折のことじゃないですか。」「じゃぁ、右折は?」「東が“卯(ウ)”でしょ。ウカジがなまって面舵(オモカジ)じゃないですか。日本語ですよ。」「ニワトリとウサギっすか、へ〜面白いですね。じゃあ直進は鼠、バックは馬っすか?」「直進は『よろしくそうろう(宜候)』、ヨーソローって聞いたことがない? あれはこれが訛った言葉なんだ。それと……あれ? バックは……」「遠藤さん“船舶用語辞典”見ながらじゃないとダメっすか?」「覚えられる頭を持ってたら、もうちょっと良いタイムで走れます!!」
遠藤の船の雑学はまだ始まったばかりなので、あまり深いことを聞いてはいけない。
神奈川スギヤマカートのレース戦略は実はカートショップのオーナー杉山氏ではなく、客が勝手にたてている。もちろん客の中にも賢いのもいればお馬鹿もいる。当然のごとく一番信用されているメンバーにその仕事が集中することになる。その仕事が集中するのが渋谷なのだ。しかしここに神奈川スギヤマカートの問題がある。渋谷は頭は良いけれどウンチなのである。何故そういいきれるか、そういうイメージだからである。だからきっと運動はできない、出来てもらうとこっちが困るのである。
渋谷のたてるレース戦略はコンピュータシミュレーションでは良い結果がでているのだが、実際にカートを走らせてみると、メンバーのカートが思った以上にタレていたり、気候の変動が予測出来ないものであったりするだけでなく、一番大きいのがメンバーの資質が犬猫レベルで、戦略をまともに実行できないため、折角の秦野のロスブラウンと言われているその才能は今だ発揮されることがない。そんな渋谷に榛名のレース戦略を聞いてみた。「ここ榛名は中低速のサーキットです。トップスピードは必要有りません。どちらかというと低速のノビが必要です。ですから大きいスプロケを付ける為に太る必要があります。が、我々スギヤマカートは敢て痩せて、そしてその上大きなスプロケを付けるというハナレワザをお見せできると思います。」
と、自信たっぷりに語ってくれた。「もしかして山田さんですか?」「御名答。そう我々には山田さんがいる。彼は誰にも気づかれずに何処へでも近付けるという技を持っています。重量の測定時に彼にそ〜っと足を体重計に載せてもらいます。誰がこの不正に気づきますか? いいえ気づく人はいないのです。」「おおっ〜!!」どよめきが起こった。そしてその横には“努力”という文字が似合わないスギヤマカートのメンバーが正月太りを解消できないまま。ポッチャリとしたお腹を突き出し、渋谷の完璧な計画にガッツポーズをしていた。、最大のスプロケ獲得は現時点で確実だった。 |