「なかなかまともな方に出会わないんですが……、え〜っと次は……手塚さん。この方は真っ当な人間なんですか。」「ええ、本当に普通の人ですよ。パンドラって言う空中に浮いた島に住んでいて、祖師谷大蔵の駅前から耳で羽ばたいて飛んで帰るらしいんです。駅前のコープで奥さんに頼まれた夕食の素材をかって帰るっていう、愛妻家ってところが特徴って言ったら特徴ですかね。」「そ、空を飛ぶ?」「耳が少し大きいので、うまく飛べるらしいんですが、それが何か?」「耳で飛ぶってダンボじゃあるまいし、化け物じゃないですか。」
「なに言ってるんですか、普通でしょそんなの。でもね、手塚さんってああ見えても愛妻家なんですよ、こっちの方が笑っちゃでしょ。」「愛妻家って見たまんまでしょ! 人間が空を飛ぶってありえないですから!!」「だって、朝ゴミ捨てをして、噂では行ってきますのキスまでするらしいんですよ、スゴイでしょ?」「だから、愛妻家はいっぱいいるけど、空を飛ぶ人間なんていないでしょ!」
「祖師谷大蔵に行ったことはないけど、地元じゃ当たり前なんじゃないですか? ライズさんに聞いたんですけど、五井の人は酔っぱらうとビルの壁を歩いて登れるって言ってたから、各地方で特色があるのは当たり前じゃないですか。」「ビ・ビルを登る?! ありえないだろ!」「なに言ってるんですか、あそこの人間は正体が分からなくなるまで飲むんですよ、平衡感覚がなくなるから、別に不思議な事じゃないですよ。しかし手塚さんは愛妻家ですよ!手を繋いで歩いたりするんですよ!」「わかりました! 手塚さんは空を飛ぶけど普通の人で、ちょっと愛妻家癖があるということですね。で、手塚さんが必要な理由はなんですか?」「足し算ができるんです。唯一ふた桁の足し算が暗算でできるひとなんで、レストランでのお会計の時に必要なのです。」
「ハイハイ、では次……後藤さんですね。後藤さんが必要な理由はなんですか?」「後藤さんは人が乗ってるプリウスを眼力だけで急加速させることができるんです。」「また出てきましたね化け物系が……、たとえそれができたとしても犯罪だし、誰も得をしないじゃないですか。」「アメリカ政府がどうしても自国の車産業を守るために、日本の得にトヨタの高い技術が邪魔なようで、どうしてもトヨタの快進撃をとめる必要があって、後藤さんのレンタル予約が入るんです。CIAがからんでるので基本犯罪にはならないように謀ってくれてるらしいです。」「ツアーにはなんのメリットもないでしょう?」「参加者の中に、三菱系の人とか日産系の人とかいて、ホンダ系も直接参加はしてないんですけど、そのへんの人たちが後藤さんの参加を求めるんです。」
「ハイハイ化け物系は必要っと……最後は羽澄さんですが、この方は?」「名誉倶楽部員の権利を唯一もってらっしゃる方で、唯一絶対に参加できる方です。」「どう言ったことからこんな名誉な権利を獲得されたのですか?」「ツアーではないのですが、もてぎの耐久レースにチームで参加し、俳優の岩城滉一さんの乗るカートと接触しまして、そのままリタイア。レース後岩城滉一さんにどなり込まれる(実話)といった逸話がありまして、事務局で検討したけっか“名誉倶楽部員”という称号を授与し、永代の参加権を保証することにしたんです。」「岩城滉一さんと渡り合ったツワモノですね。」「ええ、その時はびびって黙ってましたが、岩城滉一さんが帰ってからはちゃんと罵倒するといった、ツアー的な資質を見せてくれました。」「??何故そこまで評価が高いのですか?」「その後けっこうベアではその話題で盛り上がれたので。」「……。」
結局、全員が合格。政府民主党の思惑通り、日本に不必要なメンバーを、ツアーに隔離する政策がここに完成した。 |