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今回は写真がないので、各チームの新しいカラーリングの紹介。これはUP START-Lの善子の発案のデザイン。「ピンクとグレーの派手派手」がコンセプト。 |
2008年3月16日、無茶苦茶に寒かった日々が嘘のように、暖かい日射しに包まれ、早朝の天気予報が晴天を約束してくれているパンサーツアー開幕戦の朝、善子は「今日は優勝しちゃお〜かな〜♥」と呟いた。「ゲッ!」それに地球が敏感に反応した。一瞬の寒気の後、平均気温を1度上げてしまったのだ。オリンピックに向けてテロ対策で躍起になっているCIA極東支部の仕掛けた数億個の盗聴器の一つが偶然にもそのつぶやきを傍受、直ぐさまアメリカ本土のみならず、同盟国に向け発信された。
環境問題に敏感な欧米諸国はパニックになり日本に事態の収拾を要請、福田首相の「善子ちゃんがそんな事を言ったみたいですね。大変かと言ったら大変なんでしょうかね……。」と言う発言を引き出し、危機管理がなっていないと内閣支持率が20%になるまで30分しかかからなかった。
ヒラリークリントンがアーカンソー州の演説で「私たち女性には、ミセス久美という信頼できる友人がいます。日本時間10時からのタイムトライアルでは憎っくきオバマと善子を叩きのめしてくれる筈です。」と大統領戦への支持求めた。
それに対しオバマも負けてはおらず「昨年のチャンピオンは誰ですか? そうミスター山下じゃないですか!山下が居るのに他の誰が勝てるというのでしょうか? ヒラリーは現実を見ていない空想家でしかない! そう、山下こそ我々を素晴しい未来に連れて行ってくれるヒーローなのです!!」と熱唱、大喝采をあびていた。
そんな演説で単純なアメリカ人は、世界中に善子の悪夢はもはや存在しないかの様に思っていた。テレビ局は救世主久美と山下のアップを欲しがり、二人のアイドルグッズが多く販売された。そして予選、とても暖かかった。10分がたった……。「ギャー!!」
絶境の向こう側、ポールポジションの位置にあった善子のゼッケン番号だった。「あれ? 今日は勝だけでいいのにポールも獲っちゃった。」善子のニコニコ顔が世界中に配信される中、ニューヨーク株式市場は5万ドルも下がってしまった。真っ青になったヒラリーが「久美は太ってしまったのかしら……」と、語った言葉が世界中の新聞の一面を飾った。『太った久美、世界を裏切る!』(NYタイムズ誌、『久美は体重に負けた!』(ワシントンポスト誌、比較的久美に同情的なイギリスのデイリーテレグラム誌では『悲劇の女王久美、本戦で復活!?』と期待されていたのだが、一面でデカデカと間違えて使用されていたのは鴨居ママの写真だった……世界が絶望しているのはあきらかだった。
もうひとりの天才山下はもっと悲惨だった。世界中の期待に押し潰されそうになりながらコクピットでスタートを待つ山下の顔は真っ青だった。震える手を押さえようとして差し出したもう一方の手も震えていた。のどがカラカラだった。そんな彼の元に愛息のモヤシ君が缶珈琲をもって駆け寄って来た。「お、お前……アリガトウな……」そして、差し出された缶珈琲は空だった。「あれ……??」「ジュースなくなったから、もう一本買って!」無理矢理モヤシ君に自動販売機に連れて行かれ、全くTTに参加する事ができなかった。TT失格となり、最後位グリッドになってしまった。
タイトラの結果ヒラリー、オバマ両氏の信用は失墜し、『大統領はシュワちゃんか東国原知事のどっちかに頼もうよ。』という意見が世論を占め、やけになったマクドナルドがビックマックをメガサイズにしたら誰も食べきれなかった。
善子を止めなければ……。
茂木で考えられる最高の二人が通用しないと分かった今、もはや神頼みするしか無いような暗い雰囲気に包まれた時、一人の少年が父親に言った。「お父さん、山田はどうしたの?」「えっ?山田?……。そ、そうだ、山田がいる!」その小さな声は伝染病のように周りに広がり人々の心に強く突き刺さった。「そうだ、何時もは目立たないけど、今回は山田も参加しているんだ。」「そうだ、期待していないと、何時の間にか上位にいる山田がいるんだ。」「絶対にプレッシャーに負けるだろうなという期待にはしっかり答えてくれる山田か! 凄いヤツを忘れていたよ。」「優勝するはずも無いし、誰も期待はしていないけど、ここは山田しか無いよな!」
山田への狂信的な思いは強く政府を動かし、ここで動かなければ男じゃないと福田首相が一気に行動に出た!「山田を信じてる人は全員おかしいから精神病院に入れた方がいいんじゃないですか。」
首相の英断に寄り、取り敢えず事態は少しだけ良い方向に向かった。 |