|
アンニュイな午後の一時? いいえ本気で疲れております。 |
「優勝争いはどうだったのさ?」
「山本・山下・山形のスリーマウンテンズと今村さんが序盤争ってたんだけど、今村さん苗字に“山”が付かないから『いや〜世の中、流れっていうのがあるから、僕は一歩引きますよ。』って下がっちゃったんだ。」
「そういうタイプじゃないでしょ。」
「で、その後今村さんがインフィールドで何か絵を描き始めて『エコエコアザラク……』なんて黒魔術を始めちゃって。」
「まあ妖怪みたいな人ですから、パスするよりも呪った方がらしい戦い方だよね。」
「そこに関根さんが突っ込んで来て、今村さんに激突『悪い魔法使いを退治した!!』って皆に感謝されて、ハリーボッテーって呼ばれてたかな。」しかし、関根さんは『張りボテとは失礼な! お肉が詰まっています!!」
と自慢げに語っていたらしい。
「結局3人でトップ争いをしてたんだけど山本さんが脱落。」
「やっぱり一人だけタイムボーナス持ちだしね。」
「いや、山本さんベアから今は無きHRDに移籍して、ツアーで戻って来たから復党問題で微妙な立場で、ピットイン時に無断でレースをさぼって根回し、脱落したみたいなんだよね。」
「エ〜ッ!! それじゃあイクちゃんなんか、思いっきり造反議員じゃん。」
「マルさんもだって。」
「……。」
「レースは山形さんの性癖が出て中々追いきれなくて、山下さんを逃がしちゃったんだって。」
「性癖って?」
「山形さん、男性の後ろを追っかけるのが、どうしても納得できないらしいんだ。『こんな事をしている暇があったら女性を追い掛けていたい、アイドルの写真を眺めていたい。』ってレース中に考えちゃうんだって。」
「よく警察に捕まらないよね。」
「馬鹿を言っては困る。陰湿なスケベは犯罪だが、明るいスケベは社会に貢献し、皆を幸福にする、貴重な財産なのだ。」
えらく力説すると思ったら、イクちゃんもそっちの人間でした。仲間はわかるみたいです。
「じゃあ、結局山下さんが優勝したんだ。」
「見た目はね。」
「え〜っ? 本当に勝ったのは違う人だって事?」
「実は山下さんは倉田さんと同じく髪型やメークをさわって全く別人にする天才だから、山下さんに見えても実は別人だったりするので、簡単に優勝確定できないんだ。」
「でも、表彰式をやんなくちゃいけないでしょ。」
「本当はDNA鑑定とかしなくちゃいけないんだけど時間も無いし『きさま! いったい誰なんだ! 正体を現せ!!。』って問いつめたら『ワハハハハ明智君。僕は捕まらないよ。』ってコントロールタワーの屋根に逃げて、その正体を現したんだ。」
「えっ! その正体っていったい??」
「真面目そうに見えて、結構お馬鹿な人だったんだ。」と、その後用意していた気球に乗り込んで逃げて行ったらしい。山下さんの優勝トロフィーは事務局で預かっているので、取りに来て欲しいとイクちゃんは言っていた。
「田口さんのドライビングが少し変わってきたんだ。以前より必死で走らなくなったんだ。」
「結構努力する人だよね。」
「シャーシーを変えたら、こっちの方が合ったみたいで簡単にタイムアップしたらしいんだ。」
「じゃあ、ニューシャーシに合わせたドライビングスタイルを模索中ってことだ。」
「違うよ、ドライバーが速く走るより、速い車にのった方が近道だってわかったらしくって。前日にすごいハードな走り込みをやるようになったんだって。」
「言ってる意味わかんないけど。」
「ベアのメカ担当に、みっちり走り込ましてセッティング出しをして、しあげに『ビンキューさん乗ってみて!』って、田中さんでもタイムが出るまで延々と繰り返すんだって。」
「!!」
ベアでは社長が苦しむ分には困らないらしく、緊急ダイエットでタイムをだす方針らしい。
「原口さん1周目で最下位に落ちてるけど?」
「原口さんに『ハラグチクン、コンカイノキミノシメイダガ…。」
と言う指令がK.M.Eから入って、1周目にピットインしてコントロールタワーによじ登り、屋上からダイビング、パラシュートで先頭にでるというミッションが指示されたらしいんだ。
「そんなの出来んの?」
「証拠を残さないようにコントロールタワーを爆破して、もうもうと立ち篭める粉塵の中、見事に山下さんの前に出て来たよ。」
「すごいなぁ〜原口さん。なんで最下位?」
「遠藤さんが“同一周回で”という一文を入れ忘れたらしいんだ。」
イクちゃんが今回の作戦名は「ミッション イン ポテンツ」と呼ばれていると教えてくれた。
「阿部さんは?」
「あっ、いけね!阿部さん忘れて来ちゃった。まあいいか〜、そのうち出てくんだろうから……。」
毎回、こんな感じでレースの模様が語られ新聞が作成されているのである。 |