今年のノーベル賞の有力候補の名前の中にツアーに参戦中の山田の名前があった。それはスウェーデンのダーゲンス・ニュヘテル紙が発表したもので、地元紙で的中率も高い事から、世界の注目も高く一躍日本人で一番有名な人物になってしまった。
ノミネートさている賞は今年度から新設されたノーベルユージュアリー賞で、、世界で一番普通で平凡な生き方をしている人物を特定し世界標準として表彰することを目的に設立されたもので、その初代受賞者に山田がなりそうだというのだ。その報道を聞いて山田は「すっげ〜、俺ノーベル賞を受賞すんの?」 と、非常によろこんだ。そして、その報道を受けた世界各国では、ほぼ紛争とテロ行為がなくなり、争いの無い平和な世界へと急速に移行し始めたのだが、青少年の不登校や非行化がすすみ、異常に未成年の腐敗化が進んでしまったのだ。
専門家によると、山田が世界標準だと知って、努力や争いなど全ての行為が虚しくなり、世界からやる気が消えてしまったのが原因だということだ。ノルウェー・ノーベル委員会は事態を重く受け止め、授賞式までに山田を確保し、整形して少しでも事態の修復を計ろうと画策しているらしい。
中村がMVPの最上位に浮上した。しかし2位には受賞歴のある渋谷がつけており、渋谷の所属する杉山カートは『レースでは存在感を見せないが、授賞式では異常に存在感を見せ、賞を統べてハゲタカのように持ち去ってしまう。』と言われている恐ろしい集団なので余談は許さない状態だ。中村はそのことについて「渋谷さんだけじゃなく、高橋さん等実力者が多く、僕が賞を取るのは難しいと思います。」 と、年寄りが相手なので、勝つのは簡単なのですが、批判が恐いので殊勝な態度を一応取って、『まさか獲れるとは思ってませんでした。』と表彰式で語り、涙の流れない嘘なきをする予定ですと教えてくれた。ベアレーシングではその中村のコメントを踏まえ、嘘泣きをするならとサンミュージックで中村を修行させる予定だということだ。
三上がいきなり上位に上がって来た。
パンサーツアーでは良く有る、新人がベテランを抜いて行く風景なのだが、参戦わずか4戦目で表彰台に登る勢いなのである。その秘密が知りたいとレース後三上の周りは人だかりになった。「どうしたの? なんで速くなったの?」「いや〜、朝起きたらなんか調子が良くて、レースでは実力以上の力がでちゃったんだよね。」 と語り、性格の悪いツアーのメンバーから、ドーピングではないのかという疑惑が浮上した。そこで、三上に昨夜何を食べたのを事務局が代表して質問してみた。
「昨晩ですか? まずビールを飲みながら焼き鳥をジャム味で食べて、前菜でカエルの青汁煮と芋虫のカルパッチョをもらって、メインはうなぎの蒲焼きにマヨネーズをかけて食ったら無茶苦茶おいしかったんですよ。こんどみんなで行きませんか?」
「……。」
どうやら、馬鹿だった為、物理の法則が三上には通用しなくて、人智を超えた走りをしたため、速く走れたようだ。
鴨居ママが鴨居にソーラーパネルを付けてしまった。
「だってね、ほらウチのは色々あるからGPSだけだと不安なんで、遠隔操縦装置をつけたらバッテリーの容量がたりなくなっちゃったんで、みっともないけど付けたの。」
「え〜っ?鴨居さんって外からコントロールされてるんですか?」
「なに言ってんのよ、今までだったら口で言うだけでどうにでも出来たんだけど、歳とったら知恵がついちゃって逆らうようになったから、しょうがなくなのよ。」
「ちょっと動かしてみてくださいよ。」
「ちょっと待ってて。」
そう言うとママは腕時計のボタンを押すと蓋が開きコントローラーになった「飛べ、鴨居ロボ!」ママがそういうと「マ!」 と言って鴨居は空高く飛んで行ってしまった。
「凄い!空も飛べるんですか。」
「高く付いちゃったけどオプションで付けたの。あっ、しまった圏外まで飛んでいっちゃった……。でもこんな時用にソーラーパネルを付けたから落ちる心配がないの。いいでしょ。」
「でも……鴨居さん帰ってこれるんですか?」
「大丈夫よ。待ってて。」
それから3時間後、鴨居が地球一周して帰って来た。するとママにほっぺのルージュの跡を見つけられ、無茶苦茶怒られてしまった。
鴨居はただコントロールされているだけの男ではないと、みんなから高く評価された。 |