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パンサーツアーでうっかり寝ていると「え〜!死んじゃった?」と勘違いされるから要注意。 |
また困ったやつが参戦してきた、500の新人岡澤だ。初めてのレースで5位入賞しただけではなく、速さだけの阿呆軍団350のメンバーを差し置いて2周もリードラップをとる等、いきなりの活躍を魅せた。そのポテンシャルと言うと、1回もセッティングを変えたことが無く、ベアの推賞セッティングで乗り続けていることでも分かる通り、基本は馬鹿だと考えられる。田中の顔を観て『この人を信じよう』と思うことなんて世間の常識では考えられないことだからだ。
また、『平凡パンサー』をカート界の専門紙と捕らえていて、内容を統べて信じ実践しようとしている努力家でもあることなどから、ベアレーシングのチームメイトからは「こいつ大丈夫か?」と本当に恐れられている。ベアレーシングではこの新人を大きく育てようと、まずは九九を覚えさせ、『おかあさんといっしょ』を必ず見るようにと指導してゆく方針だ。
昨今の景気低迷をうけて世の中に華やかさがなくなり、毎日がどんよりと感じられるなか、ツアー界のグレー男原口は元気だ。意外に知られていないが、原口は多摩地区のとある山の中に住んでおり、周辺の木々にグレーの布を巻くことで地元では有名人だ。シックな環境でないと落ち着かないらしい。しかしレースともなると原口でも違ってくる。血は湧き踊り、心拍数は上昇し、気分も高揚してくるのだ。そこでカートも精一杯刺激的なカラーリングを施すのだそうだ。原口のカートを観てみると、グレーのカートに光る素材が使ってあり、シルバー仕様になっている。原口の理論によると「世界で一番目立つ色はシルバーです。光は全てを制し、目の中に光が飛び込み、誰からも警戒される色なのです。」と自信満々だ。そんな原口のレース中の写真を観たことがあるが、カラー写真なのかモノクロ写真なのか全く分からなかった。
もう一人のベアレーシングの秘密兵器が馬瀬だ。馬瀬は岡澤と違いベアのエリートコースを歩いてきたレーサーである。ライズの"酒の穴"と並ぶ伝説のレーサー強化組織がベアレーシングの"熊の穴"であり、そこで歴代1位の成績でベアレーシングのシートを射止めたのが馬瀬なのだ。馬瀬にその練習方法を聞いてみると「朝はいつも遅刻して行かなければなりません。どんなプレッシャーにも耐える心を作るためです。そしてつくといきなりコーヒーを飲みます。レーサーが身体を労るのは基本ですから。そしてすぐにバカ話しを始めます。現在のレースはテクニックだけではなりたたない、そう情報戦の一面があるので話術を高める必要があるからです。そして昼飯のメニューを慎重に選び、ゆっくりと昼食をとります。そしてコースに目をやることなくお菓子を食べながらの談話がまっています。もうそれは息の抜けない厳しい時間です。田中さんとのマンツーマンの会話です。気を抜くと後ろに阿部さんが立っていて、絶体絶命のピンチになることもあります。そんなこんなで時間をつぶして、午後に疲れない程度にカートに乗ります。もちろん帰りにみんなで風呂に入って飯を食って帰ります。これだけのメニューをこなせと言うんですからベアレーシングは恐ろしいところです。」と教えてくれた。ベアレーシングは所属のエリートは世間ではクズと呼ばれている。
高橋が新しい走行を発見したようだ。名付けて『振り子走法』、首を左右に振りながら走るらしい。高橋が語るには、レース序盤は軽く横Gにあわせて振り、レースが進むにつれて大きく首を振るのだそうだ。そして、レース中盤、やはり勝負をかけてきた高橋は首を左右に振り始めた。カッチ、カッチ、カッチと小さな音をたてながら規則正しく振っていたため後ろから追い掛けていた和田が催眠術にかかって眠ってしまった。そして関根・田中、次々に高橋の術中に落ちて全員が居眠り運転になってしまったのだ。高橋の優勝は確実だと思えた。しかし、元々たいした活躍なんてしない500のメンバーは眠っていてもポテンシャルは全く落ちることがなく、高橋自身も起きていてもたいした人間でもないので、活躍するはずもなく、レースは何ごとも無かったようにそのまま終わったのだった。 |