最終コーナーで守り過ぎた久美は、加速していかない自分のカートにいら立ちを感じていた。「このままでは負ける。」しかし相手は横尾一人、3位の丸塚は引き離したはずだ。考えろ、考えろこんな時どうすれば良いのかを……。「な〜んだ、簡単じゃない。バーゲンではこんな男どもより手強いオバサン10人を相手にしているじゃない。えい!!」「キャー!」「えい!!」「キャー!」横尾の叫び声がこだまする。「えい!!」「キャー!」横尾にはもう抗う力は残っていなかった(上の写真参照)。そしてチェッカー。パンサーツアー初めて女性パイロットが優勝決めた瞬間だった。勝因について事情通のAさんは「このレースの本当の立て役者は藤堂さんです。」といって指差したスタートラインには“ドルガバ”のロゴが描かれていた。「藤堂さんがスタート前にこっそり描いていたんです。ドルガバを前にして男性が女性に勝てるわけはありません。」と語ってくれた。そして今夜から藤堂に訪れる“買ってね”攻撃の悲惨さを心配していた。
惜しくも優勝を逃した横尾は「すみません、勝とうなんて思いません。ぜ〜ったい思いません。金輪際思いません。2位で満足しています。」としっかりトラウマになっていた。
最近遠藤を押さえて杉山カートのエースとして定着してきたのが山田だ。しかしいかんせん馬鹿ができなくて印象が弱い。そこで奮起一発、マントをつけてピットの屋根に登り「私が4位の山田マンダ!!榛名では優勝する!!」と雄叫びをあげたのだ。それを見た杉山カートのメンバーは「やべっ!山田さんとうとうきちゃったのかな〜?そ〜っとしておこう。」と見てみぬ振りをされてしまった。これを宮本がやったら「バ〜カ!」と石を投げられるとこだが、山田ゆえに本当に危ないと思われてしまったのだ。かまって貰えなかったためリアクションのとれなかった山田はいまだに新東京の屋根で“山田マン”の格好で固まっている。
木賊川が衝撃を受けている。ツアーが用意した賞品の自転車を獲得できなかったばかりか、“なんでも欲しがるトクちゃん”の地位を富田親子に持っていかれそうなのだ。そのことで「俺からラッキーを奪ったら、何が残るっていうんだ!」と嘆いていた木賊川をチームリーダーの横尾は「大丈夫だ心配しなくっていい〜って。ツキが無くなったって、いいところでスピンしたり、TT失敗したりと、思った程結果をださない何時ものトクちゃんに戻るだけじゃないか。」と優しく励ましていた。
ボーナスポイントも無く、TTでも中村・苅米の両巨頭を押さえ、4番目のタイムを記録する等才能を見せつけたかに思えた蟻馬だったが結果に結びつかなかった。蟻馬は「いや〜前が混んでるんで、ナビで検索したらピットロードがあったんで行ったらさ〜、余計に時間がかかっちゃったよ〜。」と言っていた。渋滞が大嫌いな蟻馬は、混んでくると遠回りする。
中村がまたも違反を起こし、順位が降格になった。本当はフライングなのだが、中古タイヤで、もうとっくに終わってるカートで、しかもアライメントがグズグズで4位という結果を出した為、「頭、おかし〜んじゃないの?」との警告の意味も含めて、何をしようが違反になったと言うのが真実だ。チームメイトの苅米は「ええ、頭はおかしいです。」と、裁定に納得していた。
走りの神様湯山に、ここ新東京の印象を聞いてみた。「各コーナーのクリッピングポイントが奥で、通らない方が体が楽です。路面はミューが低く、直ぐにリアが流れるので簡単に攻めた走りのフリができます。ここをホームコースにしている人が多いので『地元にはかなわないな〜』と言えるのがさらにいい。残念なのは久美さんの前を走っていたのに優勝扱いにならなかった事です。」とちょっと見方を変えてくれれば優勝だったのにと残念がった。 |