UP-START軍団だ。このチームはパンサーツアーに似つかわしくなくスタイリッシュなチームであるが、無駄な努力をする、まったく変な連中だ。大リーグボールを打つ為に特訓をする花形満の様なもので、ムチャクチャ頑張るのだが、無駄なことに時間を裂き、結果に繋がらないことに異様にこだわるチームなのだ。
藤堂はまずカートの乗り方の美しさに関して考察する。もちろんドライビングポジションも見た目重視のセッティングだ。「そんなことをして速く走れるのか?何の為の努力なのか?」の問いに藤堂は「人生なんてそんなものさ」と真面目に答えるから始末が悪い。
斉藤は自他共に認める才能有るドライバーだが、練習よりも他にする事があるのを誰もが知っている、ダイエットだ。でもこれは普通の人間でもなかなかできないものだ。しかし斉藤は私たちに「20kgのハンディは才能ではカバーできない。10kg減らす!」と強く語った。しかしその手にはコーラが握られており「明日から頑張ります」との言葉は誰も信じてはいない。
もっとも速さに繋がらない努力をするのは久美らしい、その事についてチームのチーママ善子にインタビューを求めたところ「久美さんの頑張りは凄いです。女の戦いは鏡の前よ!と、カートに乗る前の化粧がとても長いんです。」と語ってくれた。サーキットに着いてからも止む事無く続けられる努力は迫力もので、時として一度もカートに乗る事もなく帰途に着く事もままあるそうだ。
またその善子についてママの久美は「善子ちゃんて凄いの、ストレートでアクセルを踏むのよ、コーナーではクルクル回るの。」と禅問答にも似たコメントをくれた。専門家によると『今年の流行のニューフェミニンをアレンジ、彼女特有のスタイルを具体化したパフォーマンス』ということだそうだ。
レースではスタ−ト直後久美が9台をごぼう抜きするなどパフォーマンスを見せたが、エースの斉藤はアクシデントに巻き込まれ残念ながら一周目でリタイヤとなった。善子はスタートを失敗したもののその後グングン順位を上げて行き、一時6位を走るなど存在感をしめした。藤堂はモデル歩きでピットロードを走行、決めのポーズの後その場でターン、もう一度ポーズを決めた後ピットアウトして行った。 |