小雨模様の中、幸運にも路面はドライコンディション、レースは実力で決まる……。
しかしポイントリーダーの幾橋は焦っていた。「ここで勝たなかったら、もう勝つチャンスはない……」
それは前日のミーティングでの出来事、パンサーツアーも後半戦に入って、そろそろ誰がチャンピオンになるのかという事が話題になった。
「今ポイントリーダーはイクちゃんと中村さんだよね。松木さんはあと最終戦のみの参加だし、中村さんはフェスティカこれないし、
そうなると断然イクちゃん有利だよね。」「いや〜そうかな、やっぱりオレかな〜」と幾橋は、満更でもないと表情が緩む。
「でもさ、一勝もしないで年間チャンピオンだったら、やっぱり表彰は“皆勤賞”ってことになるかな〜」
「おっ、それ最高!それでいこ〜」「いいね〜ガハハハハ」「……………」幾橋はその発言がショックだった。
「いかん!このままでは年間チャンピオンが皆勤賞になってしまう」今回は楽勝のハズだったが、いきなり木村というビックネームが参戦してきた、山本も調子をとりもどしつつある、そして怪しい天気には滅法速い“雨男”の池田がいる。TTでは三人に前に行かれて5位グリッドと出遅れてしまった。「そういえば四番手にアリケンが
いるな……まいいかスタート絶対失敗するから」っと、蟻馬は問題にしなかった。シグナルがレッドからブルーに変わりレースが始まった。
一周目第一コーナー、僅かに濡れている路
面がドライビングを狂わす。トップの木村がコースをはみ出す、池田も続いてダートを走る。そして後方では阿部がスピン、深田はタイヤバリ
アーに突っ込みリタイア。もちろんスタートで出遅れた蟻馬もスピンし、レース後の言い訳材料を次々とゲットするなど荒れた序盤になった。しかし、結局レースは初参戦の木村が終始レースをリードし、池田、山本と実力者が危なげ無く走り切りそのままゴールした。
幾橋にこれで年間チャンピオンのマジックがでた。しかし現実は、優勝の可能性の高かったレースで表彰台にも乗れない結果となってしまい、ウエイトは外せないはポイントは少ないはで、“年間チャンピオン”こと“皆勤賞”さえ危ぶまれているのが現状だ。しかし蟻馬に対しての予感は狂う事なく見事に適中させた。 |